駅前広場へと出ると
大きなクリスマスツリーが目に飛びこんできた


「・・・っ」


ズキン・・・心臓を掴まれたように痛む胸

恋に背中を向けた此処は
俺にとっても決心が揺らぐ程の激情と葛藤した場所でもある


簡単に背を向けた癖に
気になって陰からコッソリ恋を見ていた

俺を想って泣き崩れる恋を見て

何度駆け寄って抱きしめようとしたことか・・・

強くも弱くもなりきれない俺自身を晒すことになったこの場所で

もう一度恋と向き合いたい


ホテルの入り口を見ながら
恋が出てくるのを待った


・・・来た


自動ドアから出てきた恋は一度クリスマスツリーに視線を動かした後

真っ直ぐこちらを見た


驚いたように肩を震わせた後
俯いてしまった恋


「恋」


俺の声は聞こえているはずなのに
動かない恋にもう一度声を掛けると

俺の存在を無視し

視線を逸らしたまま通り過ぎようとした


咄嗟に恋の腕を掴むと



「話がある」


恐る恐る俯いたままの恋に声を掛けた


「・・・私は無い」


久しぶりに聞いた恋の声に浮かれた俺は
掴んだ腕が震えていることに気付ないまま


「冷た過ぎねぇ?」


話せば分かって貰えると
簡単に考えていた

でも・・・


「そうは思えない」


恋の口から出る言葉は
あの頃より冷たくて

俺自身を拒絶しているようだった


それを肯定したのは


振り解かれた手と


「サヨナラ」


低く冷たい声だった