パーティー当日




「儂がプロポーズするから
間髪入れずに“待った”をかけて
儂の隣に跪け」



爺さんから
教えられた段取りはそれだけ


数日前に木で作ったハート型のストラップをビロードの箱へと入れた爺さん

俺には空の箱を持たせた

ここらへんが爺さんの策士たる所以だと思う

ま、相手の女だって
今年に限って見知らぬ俺から受け取るなんてことはしないだろう


そんなことを思いながら
パーティー会場へ入ると

爺さんと合流するまで
ずっと壁際で飲んでいた


少し段の低いステージ上では
余興が始まっていて

司会の社長秘書とやらの掛け合いが面白い


「さて、そろそろじゃな」


隣に立っていた爺さんが口を開くと


「ここで見守っていますね」


小松さんが小さく頭を下げた

爺さんの楽しそうな後ろ姿を見て
なんだか胸のあたりが温かくなった


「今年で四回目なんですけどね
今では一番の余興です
相手の女性がですね・・・」


小松さんの説明に耳を傾けよう聞とした時


「ハニー」


ステージ上から爺さんの声がスピーカーを通して広がった


「「「「キャーーーー」」」」


悲鳴にも似た歓声が上がり
パーティーの参加者の視線を釘付けにしている女の後ろ姿が見えた


「そろそろ前へ」


「あぁ」


会場のボルテージが上がる中心へ
少し急ぎ足で進み


「ちょっと待ったーーー!」


ヒラリとステージに上がると爺さんの隣に跪いた