小松さんへと渡したリングは
カリーナで展示早々行列を生み

それを目にした客のSNSによって

瞬く間に
作者非公表のシルバーアクセサリーとして世に知れ渡ることになった


(タウン情報誌が特集を組みたいと)

(テレビ取材も多数きてます)

小松さんからの電話は人気を裏付ける内容ばかりで

このタイミングで先に売り込みに行った店から

出店の案内までくるようになった


ま、勿論
人気が出た途端に手のひらを返すような所とは取引なんてしねぇ

俺の作品を見て

(うちならあっという間に人気作家で
翌月には専用コーナーを作りますよ)

そう言い切ってくれた小松さんに
暫くは世話になろうと決めたんだ


不気味なくらい順調過ぎて
少し不安も覚えるけれど

一日でも早く恋に会いたい


ただそれだけを願っていた


そんなある日


工房の事務所で爺さんと小松さんを交えての話の途中に


「非公表のままで構いません
木村さんのお孫さんって立場で気軽に参加して下さい」


笑顔で差し出された封筒を受け取った


【招待状】


中のカードを取り出すと
カリーナの社長主催のパーティーの招待状だった


「今年で余興を最後にするんじゃ
だから・・・サプライズを用意しとる」


隣でほくそ笑む爺さんを見ると


「今年で最後ですか?」


残念という表情の小松さん


中身の掴めない話に
ボンヤリしていると


「今年は宙にも手伝ってもらうからな」


やけに楽しそうな爺さんに声をかけられて

よく分からないまま頷いた