「・・・っ」



透明な鍵付きケースの中に収まる
ペアリングを見た途端固まってしまった小松さん


暫くそのまま話しかけずに居ることにした

言葉を発することなく
ペアリングを見入ったまま

時間にしては数分の短い時間
動かなかった小松さんは

パッと顔を上げると


「これ、凄いですね
想いが溢れてて・・・
引き込まれてしまいました」


処女作でお世辞にも上手とは言えないそれは
恋とよく二人で遊んだブロック崩しゲームを模した幾何学模様に

俺の好きなラピスラズリを中央に埋め込んだ幅太リング

シルバーならではの重厚感と
幾何学模様の陰影と
どこまでも深い群青色

コツコツと時間を掛けて仕上げたリングは

俺の心の拠り所でもあった


「触られたくねぇ」


本心からの想いを


「必ず大切にお預かりいたします」


受け取ってくれた小松さんへ
そのまま渡すことにした


「くれぐれも触ったり失くしたり
しないで欲しい」


8年間ずっと手放すことのなかったリングを

小松さんに持たせただけで

鼻の奥がツンとした


大袈裟な位の執着は
そのまま恋への想いへと繋がる

恋の指へ収まることだけを考えて
不安な気持ちを払拭するように
追加販売用の細工へと手を伸ばした