「触らせないし防犯対策完璧
という訳ですね」


「想いを込めて作ったモノだから
誰にも触らせたくねぇし
本当は他の奴へ見せたくもねぇ」


「それを貸して頂けるのだから
仰る通りに致します

・・・あっ、一点だけ」


「ん?」


「うちのWEB担当が撮影することは許可して頂けますか?
展示のお知らせをHPに載せたいので」


「・・・ん・・・」


触られなくないけど
撮影なら手に取る可能性がある

見てない所で指に通されたら・・・


「やっぱ断る」


「・・・え」


「撮影なら触るだろ、それに
勝手に着けられても困る」


「・・・」


暫く考えこんでいた小松さんは


「ではこうならどうでしょう」


リングディスプレイ用のシルクの筒に
リングを通した後で縫い止めて

撮影はディスプレイのまま
リングには触れないし

撮影に小松さんが立ち会うと提案した


「それなら・・・」


「ありがとうございます」


また直角お辞儀をした小松さんに


「持ってくる」


未だ話しただけで見せたこともないペアリングを取りに行くことにした


「よろしくお願いします」


工房に小松さんを残して
裏にある爺さんの家へ入りそれを持つと

急に胸が騒ついた

「手放す訳じゃねぇ」

自分に言い聞かせるように呟くと
工房へと戻った