「・・・提案なんですけど」


そう言う小松さんの瞳は何かを企んでいる風で


「断る」


「いや、え、待って下さいよ
まだ何にもお話してないですからね」


少し焦った顔にニヤリと笑いかけると


「あの・・・その・・・」


何度もそれを繰り返す小松さん


「ん?」


「あの・・・前にですね」


「あぁ」


「聞かせてくれたじゃないですか」


「何を?」


「その・・・」


この調子でいけば夕方になっても
核心に辿り着けないかもしれない


「まどろっこしいことなら断る
とりあえず聞くから一気に話してくれ」


「・・・分かりました」


「恋人の為に初めて作った作品を
カリーナで展示させて頂けないでしょうか?」


言い切ったと同時に深く頭を下げた小松さん


「断る」


「いや、あの・・・
入荷までの展示でも構いません
お客様に入荷を心待ちにして頂きたいと思うんです」


店頭に来るお客に見せるだけで
そんな効果があるのだろうか

俄かには信じ難いが

何度も頭を下げる小松さんに
いつしか俺が折れた


「仕方ねぇ・・・ただし」


「はいっ」


「アレは鍵付きのケースに入れてる
それをそのままの状態で鍵付きの固定ショーケースに飾るなら許可する」


我ながら細かいことを言ったと思うけど

恋に渡す前に無くす訳にはいかねぇ

俺の想いはそれだけだった