8年前




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高等部三年生へ進級したばかりの桜満開の日

委員会の居残りで遅くなる小波を待ちきれず
S女の近くにある城山公園に桜を見に行った

平日の夕方って時間帯もあるのだろうか
いつもは散歩やジョギングコースになる外周も
広い芝生の公園も人は疎らで

私はお目当ての桜を邪魔されずに
写真が撮れるとワクワクしていた

それなのに・・・


「なんで」


そう呟いたのは
ちょうど桜の木の真下にあるベンチに
金髪の学生が寝ていたからだ


・・・・・・邪魔


携帯を取り出して何枚か撮ったけれど
全体だけは金髪の所為で無理

仕方なく手の届きそうな枝に咲く花弁を撮ろうとした瞬間


「キャッ」


いつの間にかすぐ側に立っていた金髪に携帯を取り上げられた



「・・・返して」



出した声は少し震えていて
間近の金髪にも聞こえたかどうか分からないくらい小さかった


手を伸ばして取り返そうとする私に
見上げる程高い背の金髪が更に空へと手を伸ばす


・・・悔しい


ジャンプしたところで届きそうに無くて

それでも試しに跳ねてみたけれど

ひょいとそれを避ける長い手に邪魔をされ

段々腹が立ってきた


「返して」


さっきより強く吐き出した声に
私の携帯を勝手に操作していた手が止まり

漸くこちらを見た金髪



「・・・っ」



髪と対照的な漆黒の瞳に
思わず息を飲んだ


「ほら」


簡単に返してくれた携帯に視線を落とすと

ギャラリーフォルダが開いていた


「・・・?」


「俺の写真勝手に撮ったなら
水没させてやるつもりだった」


「・・・は?」