「宙が全部悪い」



突然聞こえた声に驚く


「悟」


「恋ちゃん・・・ごめんな
いくらダチに頼まれたからって
俺ら最低なことをしたと思ってきたんだ
ずっと謝りたいって思ってた」


「私も・・・ごめんね
宙と悟に頼まれたからって
自分に置き換えたら
立ち直れない程のことをしたのにって
ずっとずっと謝りたかったの」


宙の腕の中で聞いたのは
8年前を悔やむ声だった

勢いに任せて宙へ打つけた想いは
本心だけれど

私と宙のことに巻き込んでしまった二人の罪は軽くしてあげなければいけない


宙の腕の中から抜け出すと
グチャグチャな顔のまま二人の前へ立った


「失礼な態度を取ってごめんなさい
まだ正直頭の中を整理出来てなくて」


「当然だと思うよ」


久しぶりに見た悟さんは
相変わらずエクボの出来る優しそうな笑顔を向けてくれていた


「恋ちゃん、折角来てくれたんだからさ
俺の料理食べて行ってよ」


「私からも・・・悟の料理は
世界一だから恋ちゃんも
食べて笑顔になって欲しい」


あの頃のパンダメイクが嘘のように
ナチュラルメイクをしている奥さんは

一見すると別人にも見える

それなのに気付いてしまった私は

宙に囚われたままだと思い知らされた


「恋」


隣に立った宙は


「悟、すまない・・・杏樹も」


深々と頭を下げた


「店へ戻ろう」


涙ぐむ奥さんの肩を抱いて店へと戻った


「恋」


「ん?」


「さっきみたいに
気持ちを打つけて欲しい
恋の気持ち全部受け止めるから
良いことも悪いことも全部
俺に打つけて欲しい」


「・・・・・・うん」


「サヨナラなんてもう言うな」



少し震えた宙の声に胸が騒つく



浮上しても切っ掛け一つで奈落へ落ちる
ジェットコースター並みの気分は

いつ落ち着くのか・・・
落ち着かないのか・・・


分からないけれど

離れていた分そばに居て

全ての感情と向き合いながら
乗り越える未来に


二人の笑顔があれば・・・。