「ブッ」


マンションの近くにあるコインパーキングに停められた宙の車を見て堪らず吹き出した


「ま、その反応が普通だよな」


頭を掻きながらスッと目を細めた宙は

大きなSUV車のロックを解除した


「どうぞ」


助手席のドアを開けて待っている姿は
自転車に乗る宙しか知らない私には新鮮で胸が高鳴る


「ありがと」


バーを握りながらシートに座ると

車高の所為か見晴らしが良くて楽しくなる


「で・・・?」


「あぁ、あれか」


私が指を指したのは窓に付く吸盤


「メキシコで持ってた免許は
 日本では認められねぇって
 帰国してすぐ短期コースで取った」


カッコいい車に不似合いな初心者マークの訳がわかった


「誰でもすぐ取れるメキシコでも
 ずっと運転してたから安心してろ」


そう言うとハンドルを握った


初めて目にする運転手の宙
初心者マークに驚いたけれど

乗り心地は寧ろ快適で
流れる景色を見ながらも

ずっと視界には宙を入れていた


「恋、携帯鳴った」


「ん?」


膝の上に乗せたバッグの中の音を
何故、宙が気付く?

疑うように見たけれど
手にした携帯は小波からのメッセージを受信していた


「本当だ」


「急ぎか?」


「・・・・・・違う」


「そっか」



スクロールするほどの長文を送ってきた小波からのメッセージは
親友としての想いが並んでいた