「だいじょ、キャ」


声を掛ける途中で伸びてきた宙の腕の中へ閉じ込められた


「恋、ごめん
今の俺なら“待ってて”って言える
でも、あの頃はあんなやり方しか
浮かばなかった
恋は我慢強いから
我慢・・・させたよな」
 


震える声と身体は宙が泣いてることを物語っていて

「ごめん」と私を想って涙を流してくれる宙は

私が囚われてきたように
宙も私を置きざりにした罪に囚われてきたのだろう


「許さないよ?」


「あぁ」


「許さないけど・・・
償わせてあげるから」


「あぁ」


少し体温の高い宙の腕の中は懐かしくて

それに

大好きだったグリーンノートの香りが
私の安定剤のように肩の力を抜いた


「宙?」


「ん?」


「お腹すいた」


「あぁ、悪りぃ」


ゆっくり解放された身体から熱が逃げる

途端に苦しくなる胸を誤魔化すように笑顔を向けた


はずだったのに


「どうした、恋」


涙を拭いながら顔を覗き込んだ宙は
頭の上にポンと手を乗せると


「心配しなくても
もうどこにも行かねぇ」


そう言って顔を近づけ


「・・・っ」


「隙あり」


啄ばむように唇付けると
悪戯っ子のように口角を上げた


私の表情ひとつで
何もかも見透かされているような感覚

それが心地良いと思ってしまう私は

やはり宙に囚われているままなのかもしれない


でも・・・


「行こう」


側に居るから思うこと

側に居られるから出来ること


それによって変化する自分の想いを
ちゃんと受け止めていこうと思った