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昨日私が聞いたのと同じ説明を
小波にした宙は

更に話を過去へと戻した


「俺、物心ついた頃には
既に母親だけでさ・・・・・・」


私も聞いたことのなかった宙自身の話は

重くて悲しい過去だった


繁華街のはずれで小さな小料理屋を一人で切り盛りしていたお母さん

シングルマザーの大変さを想像したけれど


「俺は殆ど一人で暮らしてた」


手作り家具工房の近くに借りたアパートに小学生の頃から一人で暮らしていたという宙


「爺さんが居たから大丈夫とでも
思ったんだろうな」


酷く傷ついた顔をする宙に
胸が締め付けられる


「酒と男が切れたら
偶に帰ってくるけど・・・」


宙のことを気にかけたことは一度も無かったという


「女は母親と同じだと思ってた
だから・・・
女の思惑に乗ってたんだ、ずっと」


「だからって恋を泣かせて良い訳ないでしょ?」


小波の声に頷いた宙は


「恋は特別だった、俺、
恋がいない人生なんて考えらんねぇ」


「だったらなんで!」


小波の顔がみるみるうちに険しくなり
それを見ているだけで泣きそうになる


「どうすれば良いのか
ガキの俺には答えも出なくて

結局・・・

素直に話すことより
囚われていて欲しいと願ってしまったんだ」


・・・アダルトチルドレン・・・


大学の講義の途中、教授の余談で聞いたことがある・・・

ポツリと口から出た言葉を
目の前の小波が拾う


「・・・確かに」


あの頃は宙もまだ子供で・・・

でも、間違いなく親の愛情不足からくる歪みのような気がして

頭に浮かんだのがこれだった