唇に温かい感触がして

あ・・・っと思った時には
宙は離れた後で




「ちょ、な、にっ」



「ん?なにってキスだろ」



そう言って涼しい顔をする宙を
ひと睨みしてみる

それなのに


クスッと笑った宙は


「睨んでるつもりか知らねぇが
上目遣いのお強請り顔にしか見えねぇ」


スッと目を細めて笑った




・・・・・・ドクン




この顔が・・・好きだった


何気ない一瞬で宙の一つ一つを思い出す


髪を掻き上げる仕草も

マグカップの持ち手を使わない大きな手も

あの頃とは違って

自分で作ったモノなのか
凝ったデザインのシルバーリングが左右に2個ずつ

テーブルの上に置かれた携帯も
深い青の革にシルバーの細工が施されていて素敵



「ん?これか?」



あまりに見過ぎたのか私の視線を辿った宙は

携帯を取るとマグカップと引き換えに渡してくれた



「お洒落ね」


「サンキュ、恋のも持ってきた」


「え?」



ソファに置いた上着のポケットから
全く同じ手帳型の携帯カバーを取り出した



「昨日急いで作ったから
出来立てホヤホヤ」



焼き芋みたいな売り込みに
クスッと笑うと


「やっと笑ったな」


少し泣きそうな顔をした宙が携帯カバーを差し出した


昨日私の携帯を見て

大急ぎで作ってくれたのだろうか

素直に嬉しいと口に出来ない強情な私


お揃いを躊躇う理由は
ただただ私の意地みたいなもので


「落としたら傷つくだろ?」


受け取ろうとしない私が
手にしやすいように

カバー無しの携帯を守る為だと説明した宙は
手渡すことを諦めたのか
テーブルの上に置いてある私の携帯にカバーを取り付けた