「寝起きも相変わらず可愛いな」




「あり・・・じゃないっ」




ウッカリ流されそうになり踏み止まる



「なに?」



寝起きの鳩豆の私の脇をすり抜けるように部屋に入った宙は



「コーヒーでいいか?」



まるで我が家のようにカウンターキッチンに立った



「直ぐだから座ってろよ」



混乱したままの私にあの頃と同じような甘い笑顔を見せると

説明もしていないのに
冷蔵庫と食器棚を開いて
コーヒーを用意した


「パジャマ姿は初めてだな」


そう言ってソファの隣に座った



「・・・・・・なんで?」



「ん?此処に来た理由か?」



「うん」



「8年分の穴埋めと・・・」



「と?」



「俺が恋に会いたいから」



「・・・っ」



恥ずかし気もなくサラリと甘い毒を吐いた


いつも私が使っている夜空をモチーフにしたマグカップを宙が持ち


来客用に買った無地のマグカップを私に持たせた


きっと宙はそれを理解した上で態とそうしている

そういう奴だった


宙と過ごした時間は少なかったけれど
少なくとも一緒に居た頃は

“浮気”なんて疑う余地もないくらい
溺愛されていたと思う

だからこそ

背を向けた宙のことが分からなくて
心が壊れてしまった・・・


もちろん


麻人に返事をするまで

ずっと、ずっと宙に囚われてきたのだ



「飲まないのか?」



マグカップを両手で持ったままの私に
少し首を傾けた宙が近づいた