「出発前にどうしても
恋に一目会いたくて電話をしたんだ・・・」



パンダと一緒に消えた日
土砂降りの雨に打たれた所為で
壊れた携帯をそのまま解約したから

繋がらなかった電話



「でも、結局はそれで良かったんだ
決心してても会えば揺らぐ」



考えることもなかった宙の本心


帰国してひと月でカリーナの作家コーナーに選ばれて


私と再会まで果たした宙



「爺さんの思惑は知らなかったけど
頼まれてあのパーティーに出たんだ」



そして・・・
庸一郎さんの恋敵になった


私が相手だと知ったのは
やはりあの場で顔を上げた時だった



「一週間後に恋の家へ行く予定
してたんだぜ?
その恋が目の前に立ってて
すげぇ綺麗になってて
俺、死んでも良いと思った」



「死ぬなんて大袈裟よ」



「でも、それ位の気分だった」



「私の家って?」



「てっきり実家だと思ってたから」



「想が授かり婚して
追い出されたの」



「そっか」



「うん」



少ない言葉だけど説明が要らない


・・・あぁ、悔しい


宙とのやり取りはなんというか・・・


しっくりくる




「恋」



「ん?」



「ここに住んでもいいか?」



「は?」



「もう1分も離れたくねぇ」



「・・・・・・でも」



「嫌なのか?」



イキナリ過ぎてウッカリ流されそうになる



「急に同棲とか考えられない」



「別れたと思ってたんだもんな?」



「仕方ないじゃない」



「ってことは男が居るのか?」



宙の鋭い突っ込みに瞬きが多くなる



「恋?」



「・・・・・・今は居ない」



「今は?」



「つい最近別れた」



「浮気だぞ?」



「は?どの口がそれを言うのよ」