企画書を片手に撮影室に戻ると


「せんぱーい、
何かいいことありました?」


既に一つ目の撮影が終わったのか
パイプ椅子に座った絢音と目が合った


「ん?なんで?」


「だって〜〜
表情が柔らかくなってます〜」


「あ〜、麻人に会った」


「村越かぁ」


プウと頬を膨らませて

どうしてその役が自分じゃないのか?とか
ブツブツ言ってる絢音を横目に


企画書と商品を眺めていると


「・・・・・・?」


数枚捲った所で手が止まった



[作者非公表]


シルバーアクセサリー作家

地元出身であること以外は
全て非公表の作家さん


企画書と同番の箱を取り出すと
商品をテーブルに出した


「あ!それ可愛い〜」


早速食いつく絢音と
パッケージに入ったままの商品を眺める

ピアス、イヤリング、ネックレス、指輪
シルバー装飾を施したヌメ革のキーケースや携帯カバーまである

単にシルバーアクセサリーだけでなく
シルバーのチャームを付けた小物達は
手に取るだけで気分が上がる


なにより・・・
青と水色の天然石を多く取り入れたそれらに

一瞬で魅入ってしまった



「作家非公表だって」


「え?」


手元の企画書を覗き込む絢音


「すっごくセンス良い」


一階で並べる前に買い占めたい気分にさせる


「なんなら全部買い占めますか」


冗談には聞こえない声に


「これから人気が出るね」


「じゃあ次はこれにしま〜す」


また作業を開始する絢音の補助をする
ディスプレイに並べて角度を変えながら
大体一点8枚程の写真を撮る

それを繰り返しながら
全てのブツ撮りを終える頃には
雨を忘れて夢中になっていた


「終了〜」


「今日はありがとね」


「どういたしまして〜
また飲みに行きましょうね」



商品を箱に戻して
企画書を一番上に乗せると台車を押した


ブツ撮りが終われば商品を手放す


絢音が商品を営業ブースへ戻す間に
デスクに戻って一眼レフのデータをパソコンへ転送した




いつしか高揚した気分は頭痛を消していた