あのラピスラズリのペアリングは
カリーナに展示した途端に凄い反響で
店内から伸びる行列に夕方のローカルニュース番組で取り上げられた程
でもその所為で
今度は違う意味での問い合わせに頭を抱えることになった
それでも・・・
もしかしたらこの人気の後押しに
作家コーナーではなくて
定番に並ぶ商品になってくれれば良いと
社内は歓迎ムード一色だった
「せんぱーい、今日ですよね?」
仕事も落ち着いてきたからか
絢音から多く声がかかってウザい
「絢音!仕事中!」
何度注意してもメゲない絢音に
最後は負けてしまう私もどうかと思う
でも・・・
麻人とのことを思い出す余裕もないくらい
目まぐるしかった毎日には
小波と絢音がいつも寄り添ってくれた
「定時ね」
思い直したように絢音に視線を合わせると
「はーい」
語尾にハートマークが見えるようだった
。
「楽しみ〜」
「楽しみじゃない」
嫌々、渋々・・・
不本意乍ら・・・って雰囲気を出しながら
絢音に手を引かれてやって来たのは
レガーメの向かい側にある駅横の老舗デパートで
慰労パーティー用のドレスを買う為だった
「プロポーズ用に可愛いのにしましょ」
「嫌よ」
「せんぱいは何色でもお似合いです」
「もう26よ!」
くだらないやり取りをしている内に
気が付けばショップにたどり着いていて
2年前にも見たお姉さんが
変わらない妖艶な笑顔で迎えてくれた
「じゃんじゃん試着しましょう」
乗り気の絢音を余所に
私の視線は真っ直ぐ壁のディスプレイに向けられていた