「アイツ・・・夢とは」
私に向けた視線を外すことなく話し始めた麻人
高校の野球部で選手とマネージャーというありがちなキッカケで付き合うようになった二人は
二年生でレギュラーを取ってからの付き合いで三年生になった引退まで続いた
「惚れやすい性格で・・・」
麻人と付き合いながらも
声を掛けられると同時進行が出来る彼女
「都合の良い彼氏ね」
小さな呟きは麻人の耳に入ったようで
「その通りです」
自嘲的に笑った
「それでも別れなかったのは
好きだったからだよね?」
「そ、うですね、確かに
こっちも意地というかなんというか」
「絢音からは別れたって聞いたけど」
「はい、選手権大会が終わって
初めて僕から別れを切り出して
キチンと別れたんです」
「で?」
その別れた二人が今更・・・
「別れたんですけど・・・」
少し肩を落とした麻人は
大学の間もずっとユメに振り回されてきたという
更に・・・
麻人に彼女が出来るたびに
どこで情報を仕入れるのか
邪魔をされたらしい
「今回は?
邪魔をされただけなら
“ユメが好き”なんて言わないよね?
邪魔されたり振り回されているうちに
やっぱり好きだと気づいたのなら
私との関係を切ってからにしてよ」
聞いていれば元カノに振り回された話ばかり
強く出られない弱みでも握られているかのような歯切れの悪さに
苛々した気分が強い語気になった



