小波の泣き顔を見て頭を過ったのは

やっぱりあの頃の私のこと


ボロボロになった私を唯一近くで励まし続けてくれたのは小波だった

小波が諦めずにいてくれたお陰で
また新たな恋をしようと思えた


それなのに・・・


不幸を引き寄せる自分にため息



「まだ二ヶ月だもん」



ポツリと呟いた言葉は


だから・・・すぐ忘れられる


だから気持ちもすぐに切り替えられる




そう続くはずだった



でも・・・たった二ヶ月だけれど


麻人の隣はいつも暖かくて笑顔に溢れていて居心地が良かった


だから・・・大切な二ヶ月


そう思い直すと心がスッと軽くなった


「村越と夢を締め上げましょう」


「お、いいね絢音〜
あんた、偶には良いこと言うわ」


「小波さ〜ん、やっぱり私の扱い
酷くないですか〜??」


「桐葉って馬鹿が多いんじゃない?
浮気者と浮気者と浮気者と馬鹿」

小波のこの内訳は
宙と麻人とユメと絢音だろう


「それって馬鹿は私ですかぁ?」


「全部含むわよっ、ホント
これだから桐葉は使えない」



お酒が進むにつれ段々とヒートアップする二人



「変だけど・・・」


「ん?」


「変だけど私は麻人には感謝してる
“ありがとう”って感謝しかない」


「「は?」」


「せんぱい、ここは修羅場でしょう」


「あんたどんだけお人好しよっ」


二人の気持ちも分からない訳ではないけれど

修羅場なんて嫌に決まっている

苦しくて悲しくて辛いことに
自ら足を突っ込むなんて
真っ平ごめんだ


だって・・・

こうなった以上


修羅場を乗り越えたとしても

麻人との間にはもう一ミリの信用も生まれない


浮気を許すなんて


お互いの為にならない



自分のことなのに酷く冷静に考えていることに


少し驚いて、少し戸惑う


大人になった・・・


それだけではないけれど


絢音と小波の涙を見ても


もらい泣きもできない自分は




もしかしたら・・・


そのレベルだったのかもしれない