「私、知ってます」


「ん?」


「ユメは桐葉の同級生です」


悔しそうな顔をしながら
ポロポロと涙を溢し始めた絢音


「野球部のマネージャーで
村越の元カノです」


「そっか」


なんだか脱力感が襲ってきた


「もしかしなくても
私が浮気相手なんじゃない?」


自嘲するように出た言葉は
自分の首を絞めるようにキツイ


「違いますっ、だって
ちゃんと別れてましたもん
夢が浮気して・・・」


慌てる絢音に被せるように


「なんなの!その女!」


小波がキレ始めた


「ヨリが戻ったってことよね
あんたそれで良いの?」


「良いもなにも・・・
そのユメが一番なら
私が迷う意味ないじゃん?
それに・・・
麻人から連絡ない
それが答えじゃない?」


メッセージも着信もない携帯を見せた


「あいつーーーーっ
許せないっっ!!!」


自分のことのように腹を立ててくれる絢音


「絢音、ありがとう」


やっぱり良い後輩を持ったと温かい気持ちになったからそれで充分だ


「聞き分け良すぎじゃない?」


空の缶ビールを並べる小波は
全く納得できない様子で

それでも

別れたくない・・・とか
捨てないで・・・とか

縋り付くしかない女にはなりたくない
どうせなら笑い飛ばしてやりたい


「私って浮気されやすいタイプ?」


「んな訳ないわよっ」



敢えて口にしたのは
8年前のことも
もう気にしてないよと小波に伝えたかったから・・・


それなのに


「ちゃんと話し合いなさいよ」


終わった話を蒸し返そうとする


「もう別れたのに?」


「一方的に言い放っただけでしょ?
ちゃんと話し合いなさいよ
じゃないとまた後悔するんだから」


そう言うと自分のことのように涙を流した