デスクに戻ると
「せん、ぱい?」
向かいから様子のおかしい私に気づいたのか心配そうに声をかける絢音
「せんぱい、真っ白です」
サッと立ち上がって
側に来た絢音は俯いた私に視線を合わせるように屈んだ
・・・真っ白か
頭の中を指摘された訳でもないのに
どこか現実的ではない感覚に
絢音の不安そうに揺れる瞳を
ジッと見つめるだけしか出来なかった
「・・・恋さん」
不意に背後から声が聞こえてビクッと肩が震えた
「なに?村越、あんた・・・」
急に立ち上がった絢音の腕を咄嗟に掴んだ
「いいの・・・絢音
村越君も・・ここは会社よ」
自販機コーナーで別れを口にした私が
何を言ってんだって話だけれど
今、ここで振り返れば間違いなく泣いてしまう
その為の予防線を張って視線を合わせることを拒んだ
絢音の腕を離してパソコンへと向き合う
早く・・・離れて
しばらく立ったままの二人も
動かない私を見て諦めてくれたのか
それぞれの場所へと戻った
そこから終業時間まで
黙々と作業をこなした私は
「絶対離しません」
強引に腕を絡ませる絢音と
何故か?通用口で待っていた小波に
両脇をガッチリ捕らえられたまま
引き摺られるように歩かされ
更に何故か?
私の部屋へと連れて帰られた
「さぁ、今夜は飲むよ〜」
「そうしましょ〜」
「・・・は?」
訳もわからないまま
デリバリー料理を注文した二人は
更には即配のリカーショップから
大量のアルコールまでも注文した
「一人になりたいんだけど・・・」
そう呟いた私の声は
二人には届かなかった



