雨の日はそばにいて抱きしめて




・・・・・・は?


とか


・・・・・・あ゛?


とか


・・・・・・コラー!


とか

言いたい口を我慢して

笑顔を作ると
引きつる頬を誤魔化すことなく


「絢音ちゃん
落選メール全部お願いできる?」


態とゆっくり低い声を出した


みるみるうちに笑顔が消えて
青白くなる面白い絢音の顔を観察しながら

意地悪くも


「ちょっと席外しま〜す」


無人の課長の席へ声かけすると
サッとフロアから抜け出した


共用廊下へ出たものの

行くあてもなくて

時折すれ違う他社の従業員さんとの会釈ばかりに嫌気がさしたところで


トイレへと逃げ込んだ

レガーメのトイレは全ての階にパウダールームが設けられている

簡単だけれどアメニティも充実していて居心地が良い


一番奥の席へ座りながら
ポケットの中の携帯を取り出すと


「ふふ」


ロック画面には既に
絢音からの泣きのスタンプが並んでいた


「仕方ないなぁ」


仕返しの放置もしたし
ショボくれているはずの絢音の元へ戻ろうとパウダールームを出た


・・・あっ


ついでにコーヒーでも買って行ってあげよっか


スキップでもしそうな私の脚が


自販機コーナーの手前で聞こえてきた声に動かなくなった



「あ、あぁ、今夜は行ける
・・・わがまま言うなよ
あぁ、ユメが好きだよ」



聞こえてきたのは



私のカレ・・・麻人の声だった