家から出たくない週末を過ごすために
DVDでも借りに行こうかと話していると

麻人の携帯が震え始めた


「・・・想《そう》からだ」


画面に表示されている弟の名前を見せながら電話に出た麻人


「ん?あ、あぁ、恋さんの家に居るよ
え?あ〜、分かった」


短い電話は


「恋さんが携帯の電源入れないから
捜索願が出ましたよ」


繋がらない電話の所為で
弟の想が麻人に電話をしてきたことだった

同じ桐葉学園出身の想と麻人は
想がサッカー部で麻人が野球部
同じグラウンドの部活でよく顔を合わせていた顔見知りだったらしい



「なんだろう」


「今から来るらしいです」


「え?今から?」


「はい、何だか話があるとか」


「ふーん」



三つ下の弟は社会人一年目

大学在学中に授かり婚をした既に三歳児のパパ


『子供が出来た』


あの日は風見家にとって一番の衝撃の日だった

元々中学の頃からずっと付き合ってきた彼女は同じ桐葉でも卒業を待つだけの短期大学生だった

でも・・・
弟は四年生大学の二回生で
生活の為に大学を中退する!なんて話に発展し

迷っている間にお腹の子供は大きくなるから
弟は勢いに任せて決断しようとした

それを止めたのはうちの親


「男は一生働くからここで辞めるのは
今後の為に得策じゃない」


至極真っ当な話に
大きな決断をしたのは父親だった


「同居しろ」


両親は若い夫婦の生活費を心配して
そう提案した・・・

弟も彼女も彼女の両親も
二つ返事で同居を承諾


「恋は一人暮らし出来るな」


最終的に説得されたのは・・・私だった


郊外の新興住宅地にある実家からは
乗り換えはないものの通勤に時間を取られていた

いずれは出ようと思っていたけれど
私も働き始めて一年目だったから
ほんの少しは躊躇った

結局、小姑が意地悪してる場合じゃないと

その日のうちに小波の不動産会社へと足を運んだんだった