この街の中心駅の目の前に聳え立つ複合型商業ビル“レガーメ”


一階の入り口を抜けると正面中央に大きな噴水が出迎える

その噴水を中心にグルリをくり抜いたように広がる四階までの吹き抜けは季節によって変化を見せ

見上げるだけで携帯カメラを向けてしまうほど美しい

噴水周りのシートはいつも待ち合わせの人で埋め尽くされていて

自然と人が集うように考えられたベンチは
プロデュースした人のセンスを感じる

その奥には四機あるエスカレーター

吹き抜けを囲むように配置されているショップは
どれも此処へ何度も脚を運びたくなる魅力を持っている


このレガーメの一階の半分を占める
セレクトショップcarina《カリーナ》が私の勤める会社

とは言ってもショップ店員ではなく
レガーメの六階にある本社でWEB担当をしている


真裏に位置する通用口で社員証を取り出しチェックを受けると

二機あるエレベーターが両方到着していた

主に“人”専用の小さい方のエレベーターに乗り込むと
直ぐ後から後輩の持田絢音《もちだあやね》が声を掛けてきた


「せんぱーい、おはようございます」


「おはよう」


「せんぱい?」


160センチの私より10センチほど背の低い絢音が目の前に回って首を傾ける


「ん?」


「体調悪いんですかぁ?」


一見すると計ったような小悪魔ポーズ

でも
その瞳の奥は疑うように揺れていて
これは逃げきれないと思った


「鋭いね、絢音は」


両手を小さく上げて降参ポーズを取った


「やっぱり!そうだと思ったんです
だって・・少し顔浮腫んでますよ?
いつもの・・・ですか?」


「・・・うん」


「じゃあ、今日は私がメインで
頑張りますねっ」


ニッコリ笑う絢音を見下ろしながら
いい後輩を持ったな〜と
少し嬉しくなった