結局繋がらない携帯を心配した麻人は
土曜日のお昼に私のマンションまでやって来た


「もうっ」


玄関を開けるとすぐ
私を腕の中に閉じ込め


「どれだけ心配したか知ってますか」


少し怒っていた


「・・・・・・ごめん」


前に進む為に麻人がいるのに
過去に囚われる度に一人で閉じ籠る


「今夜は泊まっても良いですか?」


今度は耳を垂れた麻人に


「いいよ」


微笑んでみせると

一瞬で元気になった


私もこれくらい単純になれればいいのに

なんて

麻人に失礼か・・・クスッ


「え?なんですか?恋さん
思い出し笑いですか?」


どこか探るような視線をする麻人に


「麻人が可愛い」


誤魔化すように抱きついた


「・・・え?」


少し驚いていた麻人も


「可愛いのは恋さんでしょ?
いや、綺麗の間違いですね」


最早呆けてるとしか思えないことを
恥ずかしげもなく並べていた


「麻人って大きいね」


しなやかな筋肉質の身体は
私が飛びついたって動じない程で

それに比例するように
麻人は器の大きな良い彼氏だと思う


「恋さんを守らなきゃなんないでしょ?」


そう言って笑うから


「背の低い世の中の男性に
謝ってきてね」


いつも意地悪をしてしまう


「・・・え?そんな〜」


「だって小さい男は彼女を
守れないんでしょ?」


「あ、それ、違いますって」


「嘘よ、フフフ」


私を笑顔に戻してくれる天才



いつか雨の日のことを
麻人に打ち明けよう

そして・・・

二人で馬鹿なことを言って
雨の日の記憶を楽しいことに塗り替えたい


麻人の肩に凭れながら
あれ以来初めて未来を想像できた日だった