「ひゃっ…。」


私の左頬を斎藤の指が優しく撫でて涙を拭き取ってくれた。

これもきっと私じゃなくて好きな人にやりたいはず。

そう思うとまた涙が出てくる。


───ギュッ───


「あっ………えっ……斎藤、?」


なぜか私は一瞬にして斎藤の腕の中。

顔を見上げると斎藤は少し悲しそうな顔をしてる。

なんで?

なんでそんなに悲しそうな顔をするの?

そんな顔しないで…。


「俺ね、余命一年以内だって…。」


その声は少し掠れていて悲しい声をしてた。

私には分かる。

今まで影でずっと斎藤を見てきたから。

斎藤を想ってるから。

斎藤が大好きだから。

私には分かる。

斉藤も泣いてるんだって。


「あと少し…絶対にやりたいことやりきろうね」

「…っ、、うんっ…」

「よしよし」


私は少し涙を流しながらも斎藤の背中を擦って

安心させてあげる。


「ありがとう」

「いいえ」

「明日手術なんだ」

「頑張って…絶対に癌なんかに負けちゃだめだよ?」

「当たり前、この俺が負けるわけ無い」

「なに、強気になって」


初めてこんな君を見た。

けどこの言葉を聞いて安心した。