振り返りもせず走り出した私は、一人、泊まっている旅館に帰ってきた。
多分私は泣いていたんだろう。
女将さんは戸惑っていた。
それに気づいて、涙を拭い、ペコリと会釈すると、自分の部屋に帰った。
でも帰っても鍵がないから、部屋の前の椅子に座っていた。
すると、
トントントン
と、階段を上る音が聞こえてきた。
(もしかして中
野ではなく、保健の先生だった。
とっさに構えていた私は、驚いてきっとすごく間抜けな顔をしていたと思う。
「中野君から具合悪くなって帰ったって聞いたけど、永瀬さん大丈夫?」
「あ、はい」
「まぁ、寝てなさいよ。」
「……はい。」


