「えー…と?椅子何台?」


縦に椅子を何台並べればいいのやら…。あきらかに説明不足な生徒会担当の先生。すると噂の「可愛い先生」が私に話しかけてきた。


「これ、吉野先生に渡してきてくれる?」


突然言われて正直びっくりした。


「はい!」


せめても、と思い元気よく返事をして椅子を受け取る。先生と話すとなんだか不思議な気持ちだ。今まで先生に対してこんなことを思ったことがない。


入学生ぶんの椅子を並べ終えた。次は生徒会室を引っ越すらしい。なんだよ〜、帰れると思ったのに。


内心グチグチ言いながら生徒会室の荷物を3階へ運ぶ。もともと1階にあった生徒会室。荷物を運ぶのはかなりの重労働だ。



「桜花〜?」


桜花と一緒に荷物運びをすれば多少気が紛れるだろうと探す。


「んー?てかさくら、あの先生のこと見すぎ笑」


「…え?」


…そんなに見てるっけ?と自分に問いただす。


「……見てた…かも。」


「すっごいわかるよ、見てるの笑」


だめだ。めちゃくちゃ恥ずかしい。両手は荷物で塞がっているので顔を隠せないが、いまとても顔が紅いだろう。


「まあ分かるよ、あの先生なんとなく気になるよねえ」


バカにしてこないからこの子はいい子だなとつくづく思う。桜花と親友で良かった、などと何故か今考えている私。


3階へ運び終わり、1階にもう一度戻るとあの先生はもういなかった。異動してきた当日だから荷物整理とか忙しいんだろうな、と思い生徒会室の引越しに専念した。