入学式から数日が経ち、少しずつ授業が始まってきた。
うーん…私、そこそこ勉強できる方だと自負してたのにな。中学生になると、やっぱり難しくなるんだなぁ。


「未雪…なあ、未雪」


静かに名前を呼んできた。
私は反応して、徐に彼に目を向けた。


「消しゴム、貸してもらえる?」


少しだけ申し訳なさそうな顔をして、顔の前で両手を合わせてきた。
消しゴム、2つ入れてて良かったぁ…!
私はペンケースから、予備の消しゴムを出し、ハルくんに差し出した。


「さんきゅっ!」


静かに、だけどいつもの彼らしく明るく言ってきた。


授業が終わって、次の授業の準備をする。


「未雪。消しゴムありがとな」

「う、うん。どういたしまして」


私は明らかにぎこちない。
好きな人にこんなに笑顔で話しかけられてしまったらもう、固まる他ないと思う。


「未雪、しっかりしてんのな」

「え…?」

「普通、消しゴム2個も持ってねえって。マジ助かったから!」

「たまたまだよ…」