「今年度、この1年3組の担任をする溝口(みぞぐち)です」
やっと大人しくなったところで、担任の溝口先生が軽く自己紹介をする。それから、明日以降の予定の話とか、近日中に提出しないといけない書類を配るとか、そういうのをして、今日はすぐに帰ることになった。
お母さん達、帰ったのかな…。待ってるかどうか確認しとけば良かった。一応道は覚えたし、1人でも帰れるけど…。周りの様子を見るに、親と帰る子達が多くて、大勢いる中を1人で帰るのが少し嫌だな、と感じた。
少し周りを見渡していると、
「未雪、だっけ?」
と、近くから聞き慣れない声が聞こえる。
「えっ…あ、うん」
おそらく自分だ、と仮定して、声がする方に振り向いた。奥寺くんだ。もし自分じゃなかったら最悪だ。恥ずかしすぎて、穴があったら入りたくなる所だけど、幸い私に用があるようで、彼は眩しいまでに明るい笑顔を向けてくる。
「俺、春也。ほら…席隣っしょ?苗字同じだし…これからよろしくな!」
「う…うん」
…嘘でしょ、何でか声掛けてくれたよ?
それなのに私、「うん」しか言ってない!
「あっ…」
「春也!母親が携帯預かってるから、LINE交換しようぜ!」
「おう!…で、未雪どうした?」
「えっ…あ、いや…待たせちゃうから、大丈夫」
「ん?あっそう?」
奥寺くんは、彼の元に行った。
目も合わせられなくて、絶対感じ悪かった。
あぁもう!!