「未雪ー!ラッキー、まだ残ってる!一緒に帰ろー!」
私は顔を上げて智子を視界に入れた。
静かに頷いて、彼女に近付こうとした。
だけど、それは叶わなかった。
「待てよ。どうして?約束してたとかじゃないでしょ」
ハルくんに、手首を掴まれた。
いくら同い年でも、男子だ。そんなに力を入れてるわけではないんだろうけど、強くて振り払えなさそうだ。
どうしたらいいか分からない…。
私の手は微かに震える。
「あっ…!」
彼は、マズイことをしてしまったとばかりに離した。
私はハルくんを見ることなく、智子の方に行った。
しばらく智子は何も言ってこなかった。校門を出て、やっと口を開いた。
「いいの?あんな対応で」
「…いいの。チャンスなんて、無かったから…」
私は昼休みにあったことを話した。
「へえ…そうなんだ。アイツ、隣のクラスに好きな子いるくせに、未雪のこと誑かしてたんだね」
「誑かしてたっていうか…私が勝手に春也くんのこと好きになっちゃっただけだよ…」
「だけどさ、私も余計なこと言っちゃったからなぁ。未雪のことより傷付けたね」
「どういうこと?」
「こないだ遊んだ時。絶対アイツ未雪のこと好きだよー、とか言っちゃったから」
「ああ…ううん、気にしてない」
本当に気にしてない。少しだけ嬉しかったし。
もしかしたら、片想いしてる相手と両想いかもしれないとか、期待出来ただけでも…。