須崎が登校していたかどうかをわざわざ職員室まで確認しに行くなんて、何があったのだろう。

何もできなさすぎてつらい。

その言葉の裏に、どんな想いが、どんな関係性があるのだろう。



「事情はよう分からんけど、何もできんなんてことはない。」

『そうでしょうか。』

「桜木は頼りになるええ奴や。桜木がいるだけで救われる人もおるから。」

『先生…。』


肩をぽんと叩くと、桜木は再び歩き出した。

少し元気を取り戻し部活へと向かう桜木に、それ以上の話は聞けなかった。

桜木がこぼした言葉と須崎との関わりも。

あまり踏み込むのは良くないと思ったからだ。


でも、このときもっと深く聞いておけば良かったと後になって思うことになる。


守ってやりたいと思ったのに。

俺が守ろうと、そう思っていたのに。


身体だけデカくなっても人は守れない。


桜木が言ったその言葉を俺も痛い程に感じる日がくることも、まだ知らなかった。