その日の放課後。

職員室では竹石先生と新田が深刻な顔で話し合っていた。



『俺、1度須崎の親御さんに連絡してみます。』

『そうね…去年より明らかに大変になってると思うし、お家がどういう状況なのか聞いておいた方がいいかもしれませんね。』


チラっと新田が俺へ視線を向けたような気がして、捕まる前に職員室を出た。

最近の新田はやたらと須崎のことで絡んでくる。

今は話したくなかった。



「桜木?」


職員室を出ると、すぐそこに桜木が立っていた。

空手部の主将で、いつもならもう部活へ行っているはずだ。



「こんなとこで何してる。」

『いや…なんでもないです。すみません。』


桜木は気まずそうに頭を下げると、そのまま並んで歩き出した。

いつもはきはきと元気な桜木にしては珍しい姿だ。



『あの、先生。』

「ん?」

『今日って須崎さん来てたか知ってます?2年の新田先生のクラスの。』


突然出てきた須崎の名前に思わず足が止まる。

気付いた桜木も少し先で立ち止まって振り返った。