そのとき、目の前のカーテンが音もなく開いた。
「須崎…。」
『菊池先生。』
少し顔色の悪い須崎が俺を見上げて立っている。
その顔に表情はなく、泣いているよりも疲れ切っているよりも俺の心を騒がせた。
『ごめんなさい、起こしちゃったわね。』
『いえ…』
『大丈夫?寝てていいのよ。』
『大丈夫です。』
俺の後ろから顔を出した里谷先生が心配そうに聞く。
須崎は淡々と答えると、俺たちの横を通り過ぎて保健室を出て行こうとする。
『須崎さん。』
「須崎。」
同時に呼び止めた俺たちに小さく礼をすると、須崎はそのまま保健室を出て行った。
慌てて後を追おうとする里谷先生を手で制して、俺が後を追う。
「須崎。」
ふらふらと廊下を歩く須崎を呼び止めると、振り返らないままその場に立ち止まった。
授業中の校内はひどく静かで、人の気配がない。
須崎の前に周り込んでいいのかどうか迷ったけれど、結局その背中に語りかけた。



