どんどん速まる鼓動を必死で抑えながら保健室まで急ぐ。
倒れたという言葉に心臓に何かが刺さったような痛みが走った。
ここしばらく須崎は元部室に来ていなかった。
話す機会はなかったが見かければ元気そうで良かったと思っていた。
でも俺は何も見えていなかったのか。
『うわっ!』
ノックをすることも忘れて保健室のドアを勢いよく開けると、ちょうど出ようとした新田が驚いて後ずさった。
もっと静かに入ってきてくださいという里谷先生の言葉にようやく我に返る。
失礼しますと言って新田が出て行くと、保健室はとても静かになった。
『…何かあった?』
「いや、」
引かれたカーテンの向こうを見ている俺に里谷先生が遠慮がちに声をかける。
須崎が倒れたと聞いて後先も考えずに来てしまったが、素直にその名前を出していいものか迷う。
前回は俺の授業だったから様子を見に来てもおかしくはなかった。
でも今は俺の授業でもなんでもない。
須崎だからですか、と聞いた新田の声を思い出す。