須崎をおんぶして保健室までの廊下を走る。

その身体は驚くほど軽く、支えているという実感もない程だった。



「里谷先生!」

『えっ須崎さん?どうしたの?』

「授業中に突然倒れました。呼びかけても答えません。」


そっとベッドに下ろして横にさせても、須崎は何の反応も示さなかった。

俺の鼓動だけがどんどん速くなり、動揺が広がっていく。



『須崎さん?須崎さん?』

「どうですか?」

『新田先生。これ…眠ってる。』

「え?」


須崎の口元にそっと耳を寄せた里谷先生がほっとしたように呟いた。

眠ってる?



「なんだ…良かった…。」

『相当疲れてたんでしょうね。このまま休ませてあげた方がいいかも。』

「はい…そうですね…。」


間違いなく安堵しているはずなのに、その寝顔を見ていると胸が痛んだ。

眠っているはずなのに、その表情が全く心地良さそうではなかったから。

ぐっと目をつむり、苦しそうに、何かに耐えるように横たわる姿は俺の胸を締め付けた。