そのことが、俺の心を波立たせていた。
なぜだ。
どうしてだ。
俺が、須崎を守りたいと思っているからか。
『俺からお前に言うことなんか何もないわ。』
「でも…」
菊池先生は知っている。
竹石先生からでも里谷先生からでもなく、須崎本人から聞いたであろう話も。
俺が知らない須崎も。
『もうええやろ。』
今度こそ立ち去った菊池先生を呼び止めることはできなかった。
1人残された駐車場で、俺はなぜこんなにも須崎と菊池先生のことを気にしているのか考える。
自分の周囲に壁を作り、簡単には心を開かない須崎。
向き合ったときにいつも感じる微かな拒絶。
どんなに大変な状況にいても自分からは助けを求めない危うさ。
生徒と仲良くやろうなんて考えてもいないような無愛想でぶっきらぼうな菊池先生。
近付こうとする生徒はまずいない、誰からも恐れられる存在。
威圧感すらある空手部の顧問らしい大柄で引き締まった身体。
2人はあまりにも対極にいて、交わることなどなさそうに見えるのに。



