『何も知らんかった。竹石先生も里谷先生もお前も、なんでそんな須崎のことを気にすんのか。』
「じゃあ、聞いたんですね。」
『あぁ。』
だから菊池先生も須崎のことを放っておけなくなった。
それでもまだ信じられなかった。
これまで俺が見てきた菊池先生は、そんな事情を聞いたとしてもそこまで関わろうとはしなかったはずだ。
「須崎だからですか?」
『何が。』
「菊池先生が気にかけるのは、須崎だからですか。」
『質問の意味が分からんな。』
勝手に話を切り上げて背中を向けた菊池先生の後を追う。
「俺は須崎が困ってることや悩んでることがあるなら知っておきたいんです。その…担任として。」
『は?』
広い背中に投げかけた言葉に菊池先生が立ち止まった。
振り返ったその目は鋭く、いつもの菊池先生のものより圧があった。
俺が須崎のことを聞く度に菊池先生は話を逸らす。
どこか不器用で分かりやすいその態度は、須崎を守ろうとしているのだと簡単に分かる。



