まだ高校生ですよと言った桜木の言葉がふと脳裏をよぎる。
俺とは別のところで、桜木もまた須崎のことを知ったのだろう。
『ちょっと菊池先生、道塞がないでくださいよ。』
背後から聞こえた声に振り返ると、そこに部活へ行ったはずの菊池先生が立っていた。
稽古着姿で立つ菊池先生はいつもよりも存在感がある。
『菊池先生、まだいたんですか?』
『すいません、ちょっと忘れもんして。』
いつ戻ってきていたのだろう。
話に夢中で気付かなかっただけなのか、本当に今戻ってきただけなのか。
今の話が聞かれていたかどうか、今度こそ慌てて出て行った背中からは分からなかった。
『聞かれてたかしら。』
「さぁ、どうでしょうね。」
『また怒られちゃうわね。』
竹石先生がおどけたように笑って、この話はここまでになった。
俺が須崎との接し方をはかりかねている間に距離を詰めているらしい菊池先生のことが不思議でならなかった。



