『最近須崎さんはどうですか。』

「とくに問題はないように思います。」


竹石先生と生徒の話をしていた流れで須崎の名前が出た。

何気なさを意識して答えた声は、少し冷たく響いた。



『宿題とか提出物とか、遅れたりしてないかしら。』

「大丈夫ですよ。」

『1年の頃はね、時間がなかったってたまにできてないときがあって。』


そんな冷たさを敏感に察知した竹石先生が身体をこちらに向ける。

須崎のことを最初に聞いたのは、去年須崎の担任だった竹石先生からだった。



『心配してお母さんに電話したら、夜におばあさんが起きてくるんだって。』

「へぇ。」

『そんなとき、いつも誰よりも先に気付いて面倒を見るのも須崎さんだったみたいで。』


須崎は自宅で認知症の祖母の介護をしている。

最初に聞いたとき、自分とは縁のなかった言葉にすぐには状況が想像できなかった。

だけど竹石先生の話を聞くうちに、須崎が置かれている環境がいかにつらく大変なものかを知った。