「…弁当か。」

『はい。』

「中庭で食うの?」

『はい。』


気をつけるって、何をどうすればいいんだ?

竹石先生から聞いた話では、須崎は俺が思ったような問題児なんかじゃなかった。

むしろ、その反対で。

だから余計にどうすればいいのか分からない。



「まだ寒くないか?」

『大丈夫です。』


中庭と言っても校舎の棟と棟の間のわずかなスペースで、日当たりも悪いし弁当を食べるような場所ではない。

それも、1人で。



「あ、須崎。」


話が終わったと思ったのか歩き出した須崎をとっさに呼び止める。

追いかけた拍子に俺も中庭に出ていて、さっきよりも距離が縮まっていた。

不思議そうに見上げる視線は俺の頭2つ分は下にあって、初めてちゃんと向き合ったその顔立ちがやけに綺麗だったことに一瞬言葉に詰まった。



「えっと、その…今年の担任は俺だから。何かあったら、言えよ。」


その言葉に須崎は明らかに戸惑ったように首を傾げた。

なんでそんなことを言われるのか分からないと、その顔に書いてあるようだ。