こんな生徒いたっけ。

最初に思ったのはそんな失礼なことだった。

だけど竹石先生から聞いた話を思い返してその顔をしっかり頭に焼き付けた。



『新田せーんせ。一緒にお昼食べよう?』

「悪い、用あるから無理。」

『えぇ冷たーい。』


昼休み、背中から聞こえてくる声を置き去りにして職員室へ向かう。

まず先生ってちゃんと呼ばない奴無理なんだよな。

語尾をやたらと上げてくる奴も。

俺だってそれなりに真面目に生徒の役に立ちたくて教師になったわけだが、高校という場所には本気で教師の気を惹こうとする女子生徒が多すぎる。


そんなことを考えて無意識に速くなっていた足がふと止まった。



「須崎。」


中庭へ出るドアを開けていた背中に声をかけると、一歩外へ出てからこちらを振り返った。

肩の辺りで揺れる綺麗な黒髪と軽く流した前髪の下から覗く瞳はまだあどけなくて、だけど1人だけ時間の流れが違うみたいに大人びた雰囲気をまとっている。


気をつけて見ててって言われてもなぁ。