【Wataru Side】


ケトルのお湯が沸いてカップ麺に注いでいると、控えめなノックが2度聞こえた。

はっとして中からドアを開けると、そこに須崎が立っていた。

開いたドアに俯いていた顔を上げて、合わさった視線に一瞬心を掴まれる。



『ごめんなさい。』

「なんも怒ってへん。」


身長のせいで見下ろしてしまうのは仕方ないことだが、それだけで怒っていると思われるのもいつものことだ。

俺の言葉に小さく笑うと、須崎はそっと部屋に入ってきた。

ここに来るのは初めて話したあの日以来だ。



「またそれだけなんですね。」

『竹石先生にも同じこと言われる。』


またおかしそうに笑った顔に安心する自分に戸惑う。


昨日この部屋の前で新田と話していると須崎が声をかけてきた。

そのとき担任の新田に対する須崎の顔はずっと硬かった。

何か警戒しているのか、それともただ単にイケメンを前に緊張していただけなのか。


その心までは分からないけれど、俺の前でこんなにも無防備にされるとなぜか落ち着かない。