「あれ?」


再び向かった保健室から菊池先生が出てくるのが見えて思わず足を止める。

菊池先生は遠くから俺が見ていることには気付かずに職員室へ入っていった。



「荷物取って来ました。まだ寝てますか。」

『うん。よく休めるといいんだけど。』


テーブルの上に置かれているお弁当バッグの横にスクールバッグを置いて、菊池先生のことを聞こうかどうかしばらくためらう。



「あの、さっき菊池先生来られてました?」

『うん。須崎さんが体育休んでたから心配して、様子見に来たみたい。』

「そうですか。」


菊池先生らしくない行動に純粋に驚いた。

菊池先生にもそういう優しさがあったのか。



「珍しいですね。」

『そう?菊池先生って皆が思う程悪い人じゃないわよ。』

「そうなんですね。」


1人の生徒に肩入れしすぎるのはどうかと思うと言った声と、放っておけばいいと言った声の低さを思い出す。

肩入れしすぎるのではなく、1人1人にそれなりに優しいということか。