『少しでも話して楽になれたらと思ったんだけど、何も話してくれなかった。』

「須崎はよくここに来るんですか。」

『ううん。ほとんど来たことないよ。』


助けを求めていないなら、見守っていればいい?

本当にそうだろうか。



『ご家族が大変なのは聞いてるけど…須崎さんに限界が来てるんじゃないかと思うと、心配で。』

「家族…。」


自分で作っている弁当。

母親と弟の分を作るついでという言葉。

そこから何かを察するにはあまりにも少ない情報と、俺と須崎の繋がり。



『聞いてない?須崎さんの家、』

「里谷先生。そういうのは、教師間でもあまりペラペラ話さない方がいいんじゃないですか。」

『うん…そうよね。ごめんなさい。』


簡単に個人情報を話すんですねと言った声と、俺が何も聞いてないと知って安心したように笑った顔。

知りたいという気持ちがないわけではない。


だけど俺が知ることを、須崎は望んでいない。