『結果的にあなたたちの人生に大きく関わってしまうことになって、ずっと後悔してたの。』

「そんな、竹石先生は何も悪くないって渉さんも言ってます。」

『ありがとう。』


渉さんの言葉は伝えられるけれど、竹石先生の言った“あなたたち”は私たち2人ではないような気がして胸が詰まる。



『あれから…菊池先生が須崎さんと幸せにやってるって聞いて、ようやく後悔も薄くなってね。』

「はい。」

『須崎さんが短大を卒業したら大阪で一緒に暮らし始めるって手紙を貰って、その前に話しておきたくなったの。』


竹石先生が話しておきたいこと、先程から見え隠れする存在に胸がチクチクと痛み出す。

その名前を聞く覚悟を、手のひらをぎゅっと握ることで持つ。



『新田先生も、元気だから。』


強く握った自分の手に視線を落としたまま、顔を上げられなかった。

良かったと安心して笑うには、私がしたことは大きすぎた。



『ねぇ、須崎さん。』


その柔らかい声色に、ようやく顔を上げる。

温かい笑顔にふっと涙腺が緩んだ。