『すっかり大人っぽくなっちゃって。』

「そんなことないです。」


近くのカフェに移動して向かい合って座ると、より懐かしさを感じた。

高校時代は本当にお世話になっていたのに、強がってその優しさを素直に受け入れられないときもあった。



『元気そうで良かった。』

「ありがとうございます。」

『卒業したら大阪行くんだってね。』

「はい。」


その一言で、聞いていたのは渉さんからだと知る。

渉さんが大阪へ帰る前に竹石先生との間にあったことや、その後で青波さんとの間にあったことも、渉さんから聞いていた。



『菊池先生とはずっと手紙のやりとりをしててね。聞いてるかな。』

「はい、聞いてます。学校辞めてからもずっと気にかけてくださってるって。」

『そんな…私が追い出したようなものだったのに。』

「そんなことないです。」


私と渉さんの仲を疑った竹石先生が当時の渉さんを問い詰めて、結果的に渉さんは学校を辞めて大阪へ帰った。

そのことを、竹石先生はずっと後悔していた。