【Koyomi Side】


―1年半後―


『心詠ちゃん。』

「はい。」

『お客さん来てるよ。』


バイトを終えて帰り支度をしていると、バイト仲間から声をかけられた。

このドラッグストアでバイトを始めてからもうすぐ2年になるけれど、私を訪ねてくるお客さんなんて初めてだ。



『なんか、上品な感じのおばちゃんだよ。』

「おばちゃん?」


ますます不思議に思いながら表へ出ると、そこにいた人にはっと足が止まった。



『須崎さん…。』

「竹石先生…。」


高校時代にお世話になっていた竹石先生だった。

あまりに突然の訪問に驚いたけれど、変わらず優しい微笑みを浮かべる竹石先生に一気に懐かしさがこみ上げる。



『ごめんね、突然押しかけて。』

「いえそんな。お会いできて嬉しいです。」

『ここでバイトしてるって聞いてたから、どうしても会っておきたくて。』


誰から聞いているとも言わなかったけれど、その話しぶりからだいたいのことは知っているのだろうなと思った。