『お久しぶりです。』

「あぁ。」

『あの、番号教えてもらって』

「今どこにいる?」


状況を説明しようとする須崎の言葉を遮って、聞いた瞬間にはもう部屋を飛び出していた。



『実は今、マンションの前にいるんです。』

「え?」

『ごめんなさい。いきなり迷惑ですよね。でも住所も一緒に教えてもらったから…』


来ちゃいました。

そう言った声は、スマホを通さずに目の前で聞こえた。


階段を駆け下りて外へ出ると、そこに須崎が立っていた。

いきなり目の前に現れた俺をまっすぐに見上げる視線がすがるように揺れている。



『菊池先生…。』

「須崎。」


もう制服姿じゃない須崎は最後に会ったときよりも格段に大人びていて。

知らなかった時間の多さも、離れていた期間の長さも、全部ひっくるめてその身体ごと抱き寄せていた。



『先生。』

「もう先生やない。」

『会いたかった。』

「俺もや。」

『どうしていなくなったりしたの?』

「ごめんな。」


ぎゅっとしがみつくように腕を回した須崎を、強く強く、そして優しく抱きしめる。