【Seiha Side】


大阪駅のホームで心詠を見つけると、それだけで泣きそうになった。



「無事に着いたか。」

『初めて1人で新幹線乗ったから緊張した。』


ほっとしたように笑う心詠の姿に俺の緊張も和らぐ。

どんな想いでここまで来たのか、今は想像しないでおく。

なぜ俺だけ先に来ていたのか、なぜ大阪だったのか、心詠も聞かなかった。



『今からどこ行くの?』

「とりあえず荷物置きにホテル行くか。」


小さめのキャリーバッグを心詠の手から引き取って、空いた手を握った。

こんな風に手を繋ぐのも…と思い始めて思考を逸らす。



「実はどこ行くか決めてないんだ。」

『そうなの?』

「どこか行きたいとこあるか?」

『青波さんが決めてくれてるのかと思ってたよ。』


そう言いながらもバッグからガイドブッグを取り出した心詠が微笑ましくて、繋ぐ手に力がこもる。


隣にいることが、いつの日か当たり前になると思っていた。