『なんであんなに、人に頼るということをしない子なんでしょうね。』
「俺は…」
『でも菊池先生にだけは、頼ることができた。』
帰りたくない、一緒にいてほしい、そんなまっすぐな言葉を何度も聞いた。
だけど教師だった俺には、受け止めることも受け入れることもできなかった。
『竹石先生も菊池先生の手紙でそのことを知ったから、2人をもう1度会わせたいと思ったんだと思います。』
「2人?」
『菊池先生と心詠を。』
須崎ともう1度会う。
そんなことが、新田に対して許されるのだろうか。
『教師と生徒じゃないなら、もう何の問題もありませんよね。』
「立場的にはそうかもしれんけど…ただでさえ年齢差が、」
『今時10歳差なんて何も珍しいことじゃないですよ。』
固く固く封じ込めたはずの想いが、新田の手によって少しずつほどかれていく。
『それに、本気で好きなら年齢差なんて関係ありません。』
新田は自分に対してそう思ったから、須崎と付き合ってきたのだろう。
その気持ちを、大切に守ってきた関係を、今俺に渡そうとしている。



